【クレーム事例:001】約束日時の変更連絡が伝わらなかった……

約束日時の変更連絡が届かない苦情の図

《事例概要》
社内連絡ミスでご迷惑 ▶ 教育計画を作って報告しろ!役員から謝罪させろ!と過剰な要求

  • 社内での連絡ミスで、お客様からいただいた訪問日時の変更連絡が担当の営業員に伝わらず、お客様に待ちぼうけをさせてしまった。
  • お客様の夫が翌日に営業所に電話をし、社員教員がなっていない!原因を究明して社員教育改善計画を作って報告しろ!会社の責任者である担当役員から直接謝罪をさせろ!妻が勤め先の会社を休んだ分の所得補償をしろ!と要求してきた。

《適切な対応》
条件付きお詫び ▶ 事実確認 ▶ 適切な対応決定 ▶ 振り上げた拳を下ろさせる

会社のミスの可能性があれば、条件を付けて速やかに詫びる

  • 最初は事実確認ができていない状況で苦情を受けます。申出人の言うことが本当かどうかは分かりませんが本当である可能性があるのなら、本当であるという前提条件をつけて、速やかにお詫びします。
  • 「すぐに経緯を確認いたしますが、お客様のおっしゃられた通りであれば、誠に申し訳ありません。お約束の時間を守れないなとどいうことはあってはならないこと。深くお詫び申し上げます。」と、軽く前提条件を置きながら丁寧にお詫びします。お詫びの丁寧さで前提条件を付けたことが紛れますが、あくまでも前提条件をつけているので言質をとられることもありません。言質をとられないという条件があれば、思いっきりお詫びをして下さい。

事実確認ができるまで、具体的な要求には一切応えない

  • 事実確認ができるまでは、何を要求されても応諾も拒絶もしません。
  • 「お客様のおっしゃられるお気持ちはわかりますが、まず状況を確認させて下さい。」と言うだけです。「客が言っていることを信じないのか?俺が噓を言っているというのか?」と詰め寄られても、何を要求されても、「状況を(事実を・経緯を)確認させて下さい。」と言うだけです。
  • そして、事実確認を終えて会社の対応方針を見極めるまでにかかる時間を考えて、次の折衝日時の約束をします。1週間以上かかるのであれば中間の報告日を刻むことを考えます。

<参考> 【実践編】クレーム対応 即効テクニック/Stage⑥:事実を確認する

事実確認が終ったら要求の合理性を判定する

  • 事実確認を終えます。このケースでは社内の連絡ミスでお客様をご迷惑をかけたという事実が明らかになります。申出人のご不満は理にかなっていることが分かります。
  • この合理的な不満に対応するお客様の要求の合理性を判定します。
    • 社内教育改善計画を提出しろ → 過剰な要求(クレーム)です。
    • 担当役員が直接謝罪しろ → 過剰な要求(クレーム)です。
    • 所得補償をしろ → 過剰な要求(クレーム)です。
  • 3つの要求はすべて過剰な要求(クレーム)であると判定します。

<参考> 【実践編】クレーム対応 即効テクニック/Stage④:相手を見極める

会社として取るべき理にかなった対応を決める

  • 申出人との折衝とは別に、このケースでは会社のミスがあったことが分かっているので、当然ですが有効な再発防止策を実行します。このような改善は、クレーマーに説明するためのものではなく、クレーマー対応以上に企業として大切なことなのです。
  • 申出人への対応としては、営業担当者と直属の上司が一緒に申出人のご自宅を訪問し、会社のミスによってご迷惑をおかけしたことを詫び、再発防止に有効な施策をおこなったことを伝え、改めて丁寧に会社が提供しているサービスの内容を説明し、納得いただければ契約をする。というのが適切な対応と考えます。お詫びは口頭ですが、粗品やクーポン券のような物があれば数百円程度のメリットを提供するのが適切。と決めます。

<参考> 【実践編】クレーム対応 即効テクニック/Stage⑦:対応を決定する

会社が決めた適切な対応を提案して実行する

  • 申出人への説明は、会社のミスでご迷惑をかけたことへのお詫びから始まります。
  • 続けて、申出人の3つの要求は過剰なので、あっさりとお断りします。常識的な判断でわかることなので、深く理由を説明する必要はありません。「そのような対応は致しかねます」だけで十分です。「なぜだ?」と聞かれても議論はしません。「当社としては、そのような対応は致しかねます。」を繰り返すだけでよいです。
  • そして「当社と致しましては……とさせていただきたい。」と、事前に決めた「会社として取るべき理にかなった対応」を申出人に伝え、了解が得られればそれを実行します。

<参考> 【実践編】クレーム対応 即効テクニック/Stage⑧:結果を提示する

会社の提案に了解が得られなければ折衝が膠着することを厭わない

  • 会社として取るべき理にかなった対応を提案していて、それを申出人が受け入れず理不尽な要求を続けるのであれば、会社が譲ることはありません。
  • 会社は何度も同じ提案を繰り返すのみで、これ以上の譲歩は引き出せないと申出人に諦めさせます。余計な期待を持たせる言動は一切避けます。
  • 折衝を終えることを急ぎません。長引いても良いと覚悟します。
  • 申出人が激高して罵詈雑言を吐こうと、さらに過剰な要求を積み上げようと、一切動じず、礼儀正しい態度を貫きます。

申出人が諦めた様子を見せるのを捉えて申出人にとって気持ちのよい物語を作って折衝を終える

  • 「いくら言っても無理なのかも知れないが…」というように、申出人が少しでも諦める様子を見た時を捉えて、良い申出人であったという物語を被せます。
  • 「とは言え、お客様が私どもの事務の弱点をちゃんと指摘いただいたおかげで、手順を改善することができて同じミスをしない会社になることができました。ありがとうございました。この事務上の弱点は、ここの営業所だけでなく、本社に報告しており全国の営業所に周知させています。お客さまのおかげで私どもはより良い会社になることができました。ありがとうございました。」という、見方によれば本当の話で良い役柄を申出人に被せて少し気持ち良くなってもらいます。諦めるという行動に対しするご褒美を見せるのです。
  • 申出人が心の中で、「ここは無理押ししても得るものがない。わがままなクレーマーと思われるだけだ。冷静に引いた方が褒められて得なのかも知れない。」と思った時に、この折衝は円満な終わりを迎えます。

<参考> 【理論編】クレームの構造的理解/第8講:クレーマーを動かす

<参考> 【実践編】クレーム対応 即効テクニック/Stage⑨:円満に解決する