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テクニック⑨-1:決裂する場合でも、決裂させない努力を最後まで続ける
- 折衝が決裂することは恐れません。しかし、安易に決裂させてはいけません。最後の最後まで決裂を避ける努力を続けます。
- 最後の最後までとは、第三者が見て「そこまで頑張らなくても…」と思う程度までです。通常の常識を一歩踏み越えるぐらいがちょうど良いのです。なぜなら、そこまでやってこそ、折衝を決裂させた責任をあなたやあなたの会社が負わなくてよくなるからです。
- とは言え、提示した解決策の条件は一切譲歩しません。例えば、あなたは契約時に行き違いがあったことを認めて、これまでサービスを利用していた分につては不問にし、支払われた料金の全額返金が最適な解決策だとして、申出人に提示していたとします。申出人は、あなたが示した解決策に加えて、あなたの会社の社長からの直接の謝罪と、謝罪金3万円を要求しているとします。申出人が要求を変えないため、折衝は決裂します。
- でも、あなたは言います。「申し訳ありませんが、お客様のご要望にお応えすることはできません。しかし、このままでは平行線になって何もできないままになってしまいます。とても不本意です。私どもは、契約時のご説明が十分でなかったことを確認しており、いただいた料金の全額をお返したいと考えております。合意書にお客様ご自身の署名捺印をいただものをご提出いただければ、1週間以内にご指定の銀行口座に返金させていただきます。とうか、お考え下さい。」申出人は言うでしょう。「何度言わせるんだ。お前は馬鹿か!払った料金を返すのは当たり前だろう。俺はお前んとこの社長からの謝罪と、謝罪金3万円を払えば水に流すっていってんだよ。ぐずぐず言ってると謝罪金を10万円にするぞ。この時間が無駄なんだ。手間を掛けんじゃねえ馬鹿野郎。」
- これでいいのです。何度も罵詈雑言を浴びて下さい。あなたは冷静に同じことを日を改めてでも、何度も言い続けます。「誠に申し訳ありませんが、何度おっしゃられてもお客様のご要望にはお応えすることができません。私どもにできることは……」そして、またひどい罵声を浴びるのです。
- あなたは、耳を塞ぎたくなるような罵詈雑言を浴びます。そして、その記録を詳細に残します。実は、罵声を浴びれば浴びるほど、罵声の内容がエスカレートすればするほど、あなたとあなたの会社は有利になるのです。第三者がその記録を見て、あなたとあなたの会社の方が正しいと思うからです。
- 折衝を決裂させる場合は曖昧に終わらせないで、こちらからどんどんアプローチをして、一生懸命で誠実なあなたと非常識な言動に終始する申出人という構図をしっかり記録に残して下さい。
- 良くない対応は、曖昧なまま、申出人から電話がかかって来なくなったからもういいか?という受け身な対応で終わらせた気になることです。何か月か後、時には何年か後に、この話が蒸し返され、あなたとあなたの会社は申出人の苦情を突っぱねて何か月も何年も放置したように第三者から思われてしまいます。
テクニック⑨-2:円満解決のために申出人の面子が立つ花道を整える
- 最終的に申出人には自らの要求の過剰な部分を取り下げて貰い、あなたが示した解決策を受け入れて貰うという形でしか解決のしようがないのです。
- 確かにあなたが示した解決策は合理的なので、申出人にとっても内容的には受け入れられるのです。しかし、すんなり受け入れてしまうと、これまで大騒ぎをしてきた申出人の面子が立たないのです。人は自分の面子が潰されることを嫌がります。面子が立たなければ申出人は合意せず、折衝が終らず、最悪の場合は決裂してしまいます。
- もはやあなたは舞台演出家です。最終幕で申出人があなたが提示した解決策を受け入れて、颯爽と格好良く去っていく……そんな花道を整えるのです。
- ここで申出人へのキャラ付けが効果を発揮します。例えば、申出人はけして悪い人ではなく、筋を通したい気持ちの良い人。だけど、時々勘違いをして突っ走ってしまうところがある。でも話せばわかるので、時々周りとトラブルを起こしたりするけど、最後にはいつも誤解が解けて是々非々の円満解決になる人。というキャラであったらどうでしょう。今回も、いくつかの誤解があって、悪い会社を懲らしめるという気持ちで厳しい要求をしてしまったが、よく話を聞けば、会社側にも多少の不要領なところがあったにしても、悪意があったわけではなく、悪い会社ではなかった。懲らしめるための厳しい要求をしたがそこまでする必要はなかった。ここはいつものように気持ちよく円満解決だ。という演出であれば、申出人の面子が立ちます。颯爽と格好良く折衝の最終幕を閉じることができます。
テクニック⑨-3:有効なキャラ要素が垣間見える行動を褒める
- あなたの解決策に合意した時の申出人の面子を立てる演出(ストーリー)がイメージできたら、そこにフィットするキャラ付けを強化します。
- どういうキャラが有効かを明確にして、その要素が垣間見える行動を逃さすその瞬間に褒めます。行動後1分以内に褒めなければ褒める効果が薄れると考えます。
- 反対に、よくない要素が垣間見える行動に気づいてもスルーです。全く気にしません。
- 最後まで、キャラ付けを強化し続けます。強くキャラ付けしておくと、合意後に翻意させない駄目押しがしやすくなります。
テクニック⑨-4:合意後は明らかにトーンをあげて、合意して良かったと申出人に実感させる
- あなたの折衝がうまく行って、良いキャラ付けと良い演出(ストーリー)が効果を発揮し、申出人があなたが提示した解決案を受け入れる言動をします。時には渋々、時には迷いながら、言うのです。「仕方がない。今回はあなたの提案で解決にしましょう。」というように。
- その瞬間、あなたは折衝のトーンをガラッと変えます。考えられる限りの喜びと称賛を言葉と態度であらわします。そうして、申出人の緊張を解き、合意して良かったと実感してもらいます。こんな感じです。「ああ、良かった。良かったです。〇〇様はお分かりいただける方だと信じていました。やはり筋を通される方です。このように〇〇様と分かり合えたことが何より嬉しいです。ああ、良かった。良かったです。」
- あなたが大喜びをしている。申出人のキャラを褒めたたえる。そんなあなたの様子を見て、申出人も気持ちが良くなります。自分がとても良い人間であり、とても良い判断をしたような気がしてきます。「社長からの直接の謝罪が欲しい」とか「謝罪金をよこせ」とか言っていた自分が料簡の狭い人間であったような気がしてきます。
- ここまでしっかりと駄目押しをしておけば、申出人が翻意できなくなります。
- 実は、申出人はいったん合意しても、一晩たって翻意する場合が少なくありません。翻意してしまう多くの場合は、家族や知人からの助言です。「そんな合意しちゃ駄目だよ。あなたは会社の人の口車に載せられているだけだよ。」言われると、申出人はあなたとの関係を良好に保つか家族や知人との関係を良好に保つかという選択を迫られてしまいます。この時、あなたが申出人の向こうにいる家族や知人に勝つには、申出人への接し方で差をつけるしかないのです。家族や知人が申出人に向かって「お前馬鹿だな」というネガティブなトーンで接する。一方、あなたはビックリするほどの喜びと称賛というポジティブなトーンで接する。申出人が喜びと称賛で接してくれて自分を気持ちよくさせてくれるあなたとの関係を失いたくないと思ったときに、あなたは申出人の向こうにいる家族や知人に勝てるのです。
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