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1.人は「爽快・安堵」にのみ突き動かされる
- このサイトでは、人は「爽快(すっきり)」か「安堵(ほっと)」のいずれかに突き動かされる生き物だとみなします。
- 人はそんな気分だけでなく理性に基づいて行動することもあると思われていても、その人が理性に基づいて生きている方が「爽快(すっきり)」か「安堵(ほっと)」を感じるからなんだと考えます。
- 「爽快・安堵」は理性でコントロールできないので、人は簡単に「爽快・安堵」を与えてくれる薬物やギャンブルのようなものに依存してしまうのだと考えます。
- このシンプルな人間モデルはとても有効で強力です。このサイトが提供しているクレーマー対策以外の場面でも役立ちます。
2.クレーマーが期待する「爽快・安堵」
- クレーマーはクレーム行動をすることで、どんな「爽快・安堵」を期待しているかを想定して下さい。
- クレーマーの心の中の期待など外部から見えるものではないので、確実なことは分かりません。しかし、クレーマーの言動からそれを想定するか、何も想定しないかは、あなたのクレーマ対応の質を大きく変えます。クレーマーの期待を想定せず、クレーマーが言った言葉を鵜呑みにしていては、あなたは行き当たりばったりでクレーマーに振り回されるばかりです。
- クレーマーは口ではもっともらしい正義を語ってクレーム行動を正当化します。しかしそれは噓だと思って間違いありません。とは言え、クレーマーが自ら「俺は無理難題におろおろするお前さんたちを見ているとすっきりするからこんな要求をしているんだ。」とか「俺はお前たちにぺこぺこして貰えると、俺は無価値な駄目人間ではないと実感できてほっとできるからこんな要求をしているんだ。」とは言いません。言動から想定するしかないのです。
- クレーマーが期待している「爽快・安堵」が何であるかは、折衝の初期段階から想定しておき、折衝の過程でのクレーマーの言動を踏まえて適宜修正することになります。ただ、多くの場合は途中で修正する必要がありません。なぜなら、クレーマーがクレーム行動によって期待する「爽快・安堵」は、だいたい同じようなものでバリエーションがないからです。
- いずれにしても、あなたがクレーマーのクレーム行動を改めさせたいと思っているのなら、クレーマーがクレーム行動を通して期待している「爽快・安堵」が何であるかを見極めなければなりません。
3.人は「期待・行動・結果」のサイクルを繰り返して次の行動を選択する
- このサイトでは、人は何かを「期待」して何らかの「行動」をして、その「結果」を踏まえて、何かを「期待」して何らかの「行動」をするというサイクルを繰り返す生き物だとみなします。このシンプルな行動モデルはとても有効で強力です。
- 子どもがお菓子を買ってもらえることを期待して、お菓子売り場で駄々をこねるという行動をする。その結果、母親にお菓子を買ってもらえると、その子どもは次の機会でもお菓子を買ってもられることを期待して、お菓子売り場で駄々をこねるという行動をする。というサイクルを繰り返すという話です。
- この時、子どもの行動を変えたいのなら期待を裏切ればよいのです。結果的にお菓子を買ってもらえなければ良いのです。そうすると、子どもは次の行動を変えます。駄々のこねかたが甘かった?と思った子どもは、さらに激しく駄々をこねますが、それが通用しないと諦めた子どもは、知恵を使って他の行動を探します。
4.好子(アメ)による行動変容と嫌子(ムチ)による行動変容の違い
- このサイトでは、いわゆる「アメ」でつることを「好子」による行動の強化といい、「ムチ」で抑制することを「嫌子」による行動の弱化といいます。
- 一般的に信賞必罰という言葉がありますが、このサイトでは少し考え方が違います。「好子」による行動強化は有効だと考えますが、「嫌子」による行動抑制には問題があると考えます。
- 人は「爽快・安堵」に突き動かされる生き物だと考えています。「爽快・安堵」は「好子」の結果です。「好子」による行動強化は自然であり継続性があります。「好子」の提供が間欠的であっても、行動強化の効果がある程度維持されます。
- しかし、「嫌子」による行動弱化は「嫌子」を弱めたとたんにその効果を失います。親に叱られるので勉強しているという子どもは、親の監視がなくなった途端にさぼります。
- 「好子」による行動強化は自律的であり介入コストが少なくて済むが、「嫌子」による行動弱化は抑圧的であり介入コストが嵩んで効率が悪いと考えています。
- では、弱化させたい行動にはどう介入するのか?という話になりますが、それは簡単です。無視をすれば良いのです。強化させたい行動に「好子」を与え、弱化させたい行動は無視をして「好子」となる要素を完全に遮断すれば良いのです。人は「爽快・安堵」に突き動かされる生き物です。「嫌子」による介入をするまでもなく、「爽快・安堵」をもたらす「好子」が全くなければ、そんな行動をする人はいなくなります。
5.良い代替行動を準備する
- クレーム行動への「好子」を完全に遮断しただけでは、問題は解決しません。
- そもそもの起点は申出人が感じた不満です。その不満が理にかなったものであるのなら、それを解消しなければ問題は解決しません。
- 申出人がクレーム行動を捨てたうえで、どのような代替行動をすれば良いのかを予め準備しなければなりません。
- この良い代替行動について申出人の了解を得る必要はありません。あなたが考えるのです。それによって申出人の理にかなった不満の解消に導く申出人の良い代替行動を見極めます。
6.クレーム行動を弱化させ、代替行動を強化する
- クレーム行動を弱化させる方法は、「嫌子」による介入よりも「好子」の遮断の方が有効だと考えます。兵糧攻めのようなイメージです。「爽快・安堵」を一切与えません。クレーム行動をしても少しもメリットがないと観念させるのです。
- 一方、良い代替行動の強化には、積極的な「好子」による介入を行います。些細なことでも「爽快・安堵」を与え続けます。良い代替行動をしたほうがメリットがあると思わせるのです。
- 本講座「クレーマーを動かす」で説明していることは、交渉ではなく行動変容への介入です。どうやって申出人の了解を得るか?ということではなく、どうやって申出人の行動を変えて、要求内容を変えさせるか?ということです。
- 単純に言い切れば、クレーマーに与える「爽快・安堵」を出し入れしてクレーマーを動かすという考え方です。したがって、介入の方法は柔軟で創意に満ちたものになります。例えばあなたの笑顔ですら効果的に使うことができます。電話口での声のトーンも有効に使えます。対面時のあなたの笑顔や電話口の嬉しそうなあなたの声がクレーマーに「爽快・安堵」を与えるなら、それが立派な「好子」になるからです。
7.行動の変容を「統合」する
- 申出人が不条理な「クレーム」より、理にかなった「苦情」を言う方が「爽快・安堵」が感じられると思い始めると、「クレーム」を言うのをやめてそれを「苦情」にして善良な顧客になりたくなります。
- しかし、それは「爽快・安堵」をコントロールして気持ちをリードしたものであって、「クレーム」を言った時の理屈を一々論破したわけではありません。なので「クレーム」を言った時の理屈が無傷で残っていると申出人は感じます。なぜ、自分がクレームをやめようとしているのか理由が分かりません。クレーマーであった自分とクレーマーをやめたいと思っている自分、この二人の自分の辻褄を合わせられず「俺、騙されてんじゃないのか?いいように口車に乗せられてんじゃないにか?」と不安になってしまいます。
- そうならないためには、「クレーマーだった数日前の申出人」と「善良な顧客になりたがる今の申出人」は、独りの人格として統合されて辻褄があっていると思わせる必要があります。そのためのストーリーを準備して申出人に信じさせれば、申出人は行動変容した自分の人格の統合に悩まなくて済みます。
- そのストーリーはワンパターンでも構いません。例えば次のようなストーリです。「申出人は当初、あなたの会社がとんでもない悪徳な会社だと思い、社会的な制裁を与える必要があると考え、厳しい要求をしてしまったが、よくよく話を聞くと、それなりにちゃっとした会社であることが分かった。だから社会的な制裁など不必要なので、ことさらに厳しい要求をするのではなく、今は通常の要求にどどめた。」
- 申出人がそれで納得すれば良いだけなので、できるだけ単純で分かりやすいストーリーが望ましいです。
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