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テクニック③-1:情報収集フェイズでの反論は邪魔
- 申出人は、時にあなたやあなたの会社を誹謗中傷します。「どうせお前んとこはいい加減なんだろう」とか「てめえの利益ばかり考えて客のことはこれっぽっちも考えてないだよ」とか、あなたがムッとするようなことを言います。
- そう言われて「ごもっとも」とは言えないので、つい「お言葉ですがお客様……」とあなたが言いたくなる気持ちは分かります。しかし、それを言い始めるとその時点で申出人と論争になってしまいます。さて、あなたはここで論争を始めて良いのでしょうか?あなたは必要な情報を十分に得ているのでしょうか?あなたは申出人との折衝方針を固めているのでしょうか?
- あなたの正義感溢れる反論が、あなたの情報収集を妨げるのです。十分な情報のないままあなたは戦いを始めて勝算がありますか?
- あなたが申出人から十分に情報を引き出して、折衝の方針を決めるまで、反論は害あって益なしです。
- 所詮、申出人の誹謗中傷は申出人の憶測に過ぎません。誹謗中傷は「はあ…」の一言で肯定も否定もせずにスルーして話を前に進めます。
- 「はあ……で、本日お買い上げいただいた〇〇〇〇が不良品であったと、それを販売員にお話したら販売員の対応がとても失礼だったと言うことでしょうか?まことに申し訳ありません。具体的にどのような失礼な対応をしてしまったのかお話いただけますか?」と、本来申出人が話したいこと、あなたが聞きたいことを尋ねるのです。
- このような対応に「お前、何で今、はあ…の一言でスルーしてんだよ。馬鹿にしてんのか?」という申出人はいません。申出人が本当に話したいことは、自分が感じている不満です。あなたやあなたの会社の悪口ではありません。申出人は言いたいことを促せばどんどん話してくれます。そしてそれがあなたが聞きたい情報なのです。あなたは十分な情報を得て、折衝の方針を立てるまで、申出人の言われることに異を唱えてはいけません。したたかにスルーを決め込んで下さい。
テクニック③-2:漫然と聞くのではなく、聴きたいことを聴く
- まず確認しなければならないことは、申出人が何を不満に感じているか?です。不満がなければ苦情にならず、ましてクレームの余地がないからです。
- 不満は、「期待メリット」-「獲得メリット」の差です。申出人の不満が特定できたら、申出人が獲得できると思っていた「期待メリット」と現実に獲得した「獲得メリット」が何であるのかを遡って確認します。
- 次に、申出人があなたに何を要求しているかを確認します。
- 傾聴と言っても、漫然と聞けば良いということではありません。この「期待メリット」「獲得メリット」「不満」「要求」の4つの要素を聴き出すようにリードします。この4つの要素が分からなければ折衝のしようがないのです。
テクニック③-3:言質を取る必要はない。あなたが分かればいい。
- 聴きたいことを聴くと言っても、折衝は裁判の尋問でも警察の取り調べでもありません。後々に申出人を追い詰めるための証跡を集めているわけではないのです。
- あなたが申出人の話を聞きながら、「ああ、この申出人は、こんなメリットを期待していたんだな。でもそれが満たされなくて不満なんだな。」と分かればそれで充分です。いちいち「では、お客様は〇〇〇のような効果を期待されていたが、その効果が出なかったというご不満なのですね。」と、YESかNOの返答を求める必要はありません。後々の折衝で「お客様、あの時、私の質問にYESと答えましたよね。ですから、了解いただけるはずですよね。」とはならないからです。
- そもそも、あなたが何をどのようにわかったかということは、申出人に逐一伝える必要はないのです。
テクニック③-4:共感なくして傾聴なし
- 共感することは傾聴の目的ではありません。しかし、共感なくして有効な傾聴は望めません。自分の話を批判的な姿勢で聞く人に、心穏やかに包み隠さず話のできる人など、この世にいないからです。
- しかし、共感を際限なくやっていると迎合になってしまいます。迎合は了解の意思表示になりかねません。
- 共感は「何も約束しない」「何も了解しない」で行う必要があります。そのためのコツは条件付きで行うことです。
- 例えばこのように言います。「お客様のおっしゃる通りであれば、それは本当にひどい話です。私も腹が立ちます。」「状況を調べる必要はありますが、今のお客様のお立場であれば、それはとても不安なことだと思います。お客様のお気持ち、よくわかります。」
- このように条件を付けたうえで、感情をシンクロさせます。時には焚きつけるぐらいに一緒になって盛り上がります。
- 申出人は、自分の感情にシンクロしてくれる人を信頼して、気持よく多くのことを話します。そうすることによって、あなたは傾聴を通して得たい情報を得ることができるのです。
- また、稀に、申出人の不満が「自分の気持ちを分かってくれない」であって、要求が「自分の気持ちを分かって欲しい」というケースもあります。そのような場合は、条件付きであっても共感を伝えるだけで不満が解消してしまいます。あくまでも稀な話です。
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