常套手段④-01:普通なら受け入れること、理解できることを拒絶する。

  • あなたは誠心誠意申出人の話を聞き、問題解決に向けて積極的に社内調整をして、これ以上にない提案をしています。「このようにさせていただきます。ご了解いただけますか?」と言うあなたへの返答は「いや、全然納得できない。それはそっちの都合の良い話だ。ちゃんと納得できる話を持って来い。」です。あなたは途方にくれます。
  • 会社の上司は、なんでこんな良い提案を納得させられないのだ?これ以上の提案はない。文句はない筈だ。ちゃんと相手に説明しているのか?とあなたを問い詰めます。
  • 申出人は納得出来ない理由を、何か言います。「俺の話をちゃんと聞いていない。」「そもそも、この問題は〇〇だ。そいういったことが分かっていない。」とか、もっともらしい理由なのですが、具体的に何をどうすれば良いか分かりません。会社の上司に話しても「じゃあ、その通りにして納得させなさい。」と言うだけで、どんどん自分の立場が悪くなります。
  • あなたは禅問答のような申出人の言う「理由」を深く考え始めて、出口のない袋小路に入ってしまいます。
<対応策>
  • このようなケースの場合、申出人はあまり深く考えていない場合が少なくありません。適当なことを言っているだけということです。家電量販店で冷蔵庫を買うときに、「もっと安くならないの?」と言っているのと同じです。揺さ振ればもっと値引きしてもらえるかも?と同じ料簡です。すんなりと了解しないでいれば、もっと良い条件が提示されるかも?と思ってじらしているのです。
  • 了解しない理由は、ほぼ思いつきを口から出まかせに言っている可能性があります。あなたがそれを禅問答のようで具体性がないと感じたら間違いありません。スルーして構いません。
  • 対応策は一つです。あなたの提案が申出人にとってもベストであるとあなたが確信できるのであれば、これ以上良い条件は提示されないということを申出人に理解させるのです。ある意味、諦めさせるのです。期待させないということです。
  • 「これ以上のご提案を当社がさせていただくことはありません。」という意味の言葉を繰り返すのです。できれば、同じフレーズを繰り返します。人は自分に都合よく解釈する生き物です。表現が変わるとその変化に期待を持たせてしまう場合があるので、表現すら変えません。もう全く期待できないんだと思わせることが大切です。
  • 出来れば、噓でない範囲で、あまり引き延ばすとこの提案がキャンセルされて、もっと厳しい提案になってしまうかも知れない。と匂わすことができれば効果倍増です。

常套手段④-02:「誠意」「社会的責任」「道義的責任」といった曖昧な概念を持ち出す。

  • 「誠意を示せ」と言われても、「社会的責任を果たせ」「道義的責任があるだろう」と言われても、具体的に何を要求されているのか分かりません。暗に金銭的な凄い譲歩を求めているような匂いはしますが、具体的に何を求めているのかを曖昧にされて、あなたは戸惑います。
  • きっかけは、何かのサービスが十分に受けられなかった。と言うようなことで、申し訳ありませんと言うことで、十分なサービスを提供しました。「やあ!ありがとう。かえって手間をとらせちゃったね。」と申出人が言い、「いえいえ、ごちらこそご迷惑をおかけしました。今後ともよろしくお願いいたします。」と答えて、円満終了とはならないのです。
  • この上に何をしたら満足していただけるのだろう?どうしたら、誠意とか社会的責任とか道義的責任というものを形にできるのだろう?あなたは、たちのわるい人に絡まれているような嫌な予感がします。申出人は曖昧な概念を持ち出して、あなたの会社から更なる譲歩を引きだそうとしているだけです。
<対応策>
  • ここで、「誠意」とは何か?「社会的責任」とは?「道義的責任」とは?と考える始めるのは無駄です。すでにお客様のお困り事は解消しているのです。法的な責任も果たしているのです。あらゆる責任は果たしているので、そのことをストレートに言えば良いのです。
  • 当社として、すべき対応は全て終えております。これ以上のことは考えられません。よろしくお願い致します。」という程度で十分です。
  • 申出人は、「ふざけるな!お前んとことは二度と取引をしない!」とか「訴えてやる!」とか「ネットで拡散してやる!」とか言われるかも知れません。でも、それで構いません。この常套手段を使うのは明らかなクレーマーです。クレーマーを満足させる必要はないのです。

常套手段④-03:叶いそうにない要求や特別待遇をあえてストレートに主張する。

  • 「今後、このサービスを永遠に無料で提供しろ」とか「社長に謝らせろ。謝罪の記者会見をして。あんたの会社のWebサイトに謝罪文を掲示しろ」とか滅茶苦茶と思える要求をする申出人に、あなたは手を焼きます。
  • 申出人がその要求水準を変えないため、何度折衝しても「で、社長はいつ記者会見をするのか?」「そのような対応は致しかねます。」「じゃあ話にならない。頭を冷やして出直せ。」と言って電話を切られます。
  • 折衝が行き詰まり膠着します。申出人の要求が過剰であることで社内でもこの折衝が注目されはじめ、なんでこんなにこじれたのか?折衝の仕方がまずかったんじゃないのか?という空気が漂います。あなたの折衝の仕方が良くないのだと思う人が社内に現れます。上司も、お客様の神経を逆なでしないように。しっかりと傾聴して。などという指導をし始めます。あなたは立場が苦しくなり、早期に申出人の要求を妥当なレベルに抑えたいと思うのですが、申出人は意に介しません。有効な手立てがなくなって、あなたは追い詰められます。
<対応策>
  • 申出人には時間的な制約がなく、「じゃあ話にならない。頭を冷やして出直せ。」を延々と繰り返せばよいと思っています。いつか会社が折れて、別の形であってもより良い待遇を準備するだろうとたかをくくっています。
  • あなたは、これがクレーマーの常套手段であることを社内に説明し、過剰な要求をする申出人の企みを成功させてはいけない。公平性の観点で他の善良なお客様に申し訳ないことになる。という気持ちを社内で一つにしてもらい、その上で時間的な制約のない状態で申出人と対峙します。
  • あなたは、会社から提示できる妥当な解決策を示し、申出人の要求との乖離をそのままにし続けて、何年折衝が続いても構わないと覚悟します。
  • 申出人はあなたの会社の姿勢が揺るがないと分かれば、もっと現実的な条件交渉を始めます。